自宅ごはんを中心に、まあまあ幅広いトピックを扱うくりたです。
今日は日本人のほとんどが知っている、日本古来のスパイスである山椒について新たに発見した魅力がありましたので、報告したいと思います。
すでに知ってたよ、という方がいたらごめんなさい。でも私にはとても素晴らしい驚きだったのです。
春の味覚。新鮮な山椒の葉を手摘み
今の職場はまあまあ広い庭があり、様々な樹木が植わっています。山椒の木もそのひとつ。三月半ばの寒さが緩んで春を感じる日が多くなってくると、徐々にかわいらしい新芽が伸びてきます。

4月も半ばの今頃はすっかり葉が生い茂り、雌花には小さな蕾もついています。
今年まで知らなかったのですが、山椒の木は銀杏と同じように雄花と雌花があって、二本の木がないと実がならないのだそうです。なぜ雄花と雌花に分かれているのか、そもそもなぜそのような構造の植物があるのかについては専門家にその席を譲るとして、今日の本題は山椒の葉の香りです。
実がなるように花の部分を摘まなければ、木の芽(山椒の葉)は自由にとっても良いよとのことなので、天気の良いある日に収穫することにしました。
山椒の木には薔薇よりも細かく鋭い棘があり、うっかりすると刺さして指先から血が出ることもあります。注意しながら柔らかな葉を素手でちぎり、ボウルに軽く一杯ほど摘みました。
事務所に戻って摘んでいた右手を嗅ぐと、山椒のピリリとして爽やかで、ほんの僅かに甘い香りが漂います。なんて素敵な香りなのかとうっとりしながら何度も確かめるように嗅いでいるうちに、不思議な気持ちに。もちろん山椒の香りは山椒の香りなのですが、これはどうも他でも嗅いだことがある香りではありませんか?
木の芽は実はタイ料理なのか?
深く香りを吸い込んで、記憶を辿っていきます。
おや!んんん?なんだか脳内にエスニックな記憶が浮かび上がります!
これは、もしかしてタイ料理のグリーンカレーの香りでは?
グリーンカレーには様々な材料が含まれていますが、もちろんココナツミルクではありません。
これは・・・これは・・・こぶみかんの葉、またはバイマックルー、あるいはカフィアライムリーフと呼ばれる、あれでは?
こぶみかんの葉は丸くて硬くて山椒の若芽の姿とは全く違いませんが、目を閉じて何度も確かめると、やはり間違いなく似た香り。
そう思って同僚にそのことを伝えると、確かに山椒の葉の香りは爽やかである種柑橘系のような雰囲気もあるので、もしも両者がミカン科なら共通するものがあるかもね、とのこと。
家に帰って調べた所、やはりでした。山椒はミカン科サンショウ属、こぶみかんはミカン科ミカン属と、属は違いますが山椒もこぶみかんも同じミカン科です!
そう考えて見るとこぶみかんの小さなボコボコの緑色の実と、ぶどう山椒の3ミリほどの小さな実も、大きさは違うもののどちらも未熟なみかんという感じです。
山椒は日本料理に、こぶみかんはタイ料理に爽やかで独特の味わいと香りを添えるために欠かせないスパイスですが、それぞれの料理は全く違うのに元々の素材の持つ香りがこんなに似ているなんて、なんだかとても劇的です。
小さなイノベーションは大きな喜び
今までは両者を重ねて考えるなんて思いもしませんでした。
なぜならそれぞれは全く違う存在で、接点があるなんて頭の片隅でチラリとも想像したことがなかったから。
それが香りを嗅いで感覚を研ぎ澄ませ、注意深く自分の記憶の海に潜っていくことで結びついていったのです。
二つの香りが似ているという発見と共に、日本料理とタイ料理は違うという論理的というかいわゆる左脳的な先入観に、感覚が打ち勝った瞬間でした。少し大げさかもしれませんが、私自身の理性の檻を私の感性が乗り越えて新しい地平にたったかのような目が覚めるようなうれしさ。
他人にとってはそんなに大したことではないと思うのですが、今日は私だけにイノベーティブな小さくて大きい良い出来事が訪れた日でした。
芳しきこの小さく柔らかな葉が常識を変えてくれたのです。
