精神を支える5つの憲章をもつスポーツ

自宅ごはんを中心に、まあまあ幅広いトピックを扱うくりたです。
前編からかなりの日が経ってしまいました。前編があったことを少ない読者の方もお忘れでしょう。
何をどう書こうかどんどん時間が流れ、考えあぐねるなどとブログにあるまじき逡巡が私を捉えました。ラグビーの魅力は多角的で動的。それを短いテキストで表現するとなると、友人曰く「チャレンジング」な行為でなかなか難しい。
が、これはあくまでも導入として今感じていることで突き進ませていただきます。
ラグビーが他のスポーツと決定的に違うのは、憲章を持つスポーツだということ。
現キャノンの社長さんもその精神に感動して社内の同好会チームをトップリーグに入るチームまで引き上げたことが、日経新聞のインタビューで語られていました。
ラグビーの憲章は以下の5つです。(ワールドラグビーサイトから引用)
品位(INTEGRITY)
品位とはゲームの構造の核を成すものであり、誠実さとフェアプレーによって生み出される。
情熱(PASSION)
ラグビーに関わる人々は、ゲームに対する情熱的な熱意を持っている。ラグビーは、興奮を呼び、愛着を誘い、グローバルなラグビーファミリーへの帰属意識を生む。
結束(SOLIDARITY)
ラグビーは、生涯続く友情、絆、チームワーク、そして、文化的、地理的、政治的、宗教的な相違を超えた忠誠心へとつながる一体的な精神をもたらす。
規律(DISCIPLINE)
規律とはフィールドの内外においてゲームに不可欠なものであり、競技規則、競技に関する規定、そして、ラグビーのコアバリューを順守することによって表現される。
尊重(RESPECT)
チームメイト、相手、マッチオフィシャル、そして、ゲームに参加する人を尊重することは、最も重要である。
薄れてしまった美徳を思い起こさせる
テキストとして読むと少し堅苦しく感じるかもしれません。
けれども多くの試合、試合後のインタビュー、その他のラグビー関連のドキュメンタリーなどを観ていると、この憲章が生きたものとして少なくともトップ選手たちの精神に根付いていることが感じられます。
選手たちも人間なので、時に怒ったり眉をひそめるような振る舞いが彼らの人生の中であるとは思いますが、少なくともラグビーに関しては非常に誠実であると思います。
どんなにワンサイドゲームであっても、勝利したチームが敗北したチームのことを揶揄したり、一段下に見るような発言はしませんし、己の功績ばかりを讃えるようなこともありません。
2019年のワールドカップ初戦でロシア代表に対して3トライのハットトリックを達成した日本代表の松島幸太郎選手も、この偉業に対して自分の手柄を自慢するのではなく、他のメンバーのサポートが優れていたことが結果に結びついたと試合直後にも発言しています。
他の代表チームも同様、マンオブザマッチ(その試合の最優秀選手)に選ばれた選手たちやキャプテンも、あくまでもそれぞれチームでの共同作業の結果としてだということを必ず言っています。
そうした方が世間受けが良いから、というような付け焼き刃だと、激しい試合の直後でのインタビューなどではどうしても精神的な隙が出て、素の部分が顔を出してしまうと思いますが、そこでほぼ全ての選手にボロが出ないというのは、本当に徹底的に姿勢を日頃の練習から身体と心に叩き込まれてきた結果かなと思います。
現在世界の政治の世界では、トランプ大統領を筆頭として「吾が」の精神が蔓延し、様々な社会の分断を後押ししていますし、経済の世界でも「金を稼いだ者が偉い」「相手を出し抜いたり、効率よく労せず勝ち組に入ることが最高」という価値観もかなりの勢力を保っています。
けれども実際には社会の多くの人は、そんなエゴが跋扈する競争社会に疲れているのではないでしょうか。
2019年ワールドカップにおける日本の異常過熱とも思える熱狂は、もちろん日本代表が破竹の快進撃をあげたことが一番ですが、その中で泥臭い身体を張った献身的なプレーがあり、そのプレーが選手それぞれのポテンシャルだけでなく、それを基礎とした過酷な練習を積み重ねての結果で、チームであることへの誇りをもつ姿に、なんとなく現代社会が忘れてしまったような美徳を見たからではないでしょうか。
かくいう私も一応人生のモットーに「フェアネス」を掲げています。
自分自身が365日いつでもそれを実践できているかどうかはちょっと怪しいとは思いつつ、なるべくその行動規範を忘れないように心がけるという程度ではありますけども。
ラグビーを観ていると、そのことを改めて思い起こさせてくれるところがあって、ゲーム性そのものと同じくらい強い引力を感じさせる要素だなと思っています。
おまけのようだけれど馬鹿にできない大きな魅力:チャラくない
精神的要素が強烈に好ましいラグビーですが、おまけのようなでも割と重要な要素としては選手の見た目が「チャラくない」というのも挙げられるかなと思います。
一気にナンパな理由ですけれど、今回の大会でにわかファンと言われる人たちの中でも、初めてラグビーに触れて「選手がチャラくないのが良い」と言ってる人たちが私の友人知人の間にも複数名いました。
チャラさを好む人たちがいることも事実ですが、一方でそうではないもの、ストイックな姿勢に魅力を感じる人も沢山います。
なぜチャラくないかというと先に挙げた憲章の存在による叩き込みが形になって現れているのですけれどね。
実際のリアルな生活になると愛人についてや、暴力、差別的発言などで物議を醸し出す選手もいますけれど、少なくともラグビーに関してはトップ選手は呆れるほどに誠実です。
何もかもがスピーディーに変わっていく現代で、変わらない確かな誠実なプレーに時々胸が詰まります。
超おまけ:
写真はラグビーマガジン12月号に掲載されている南アフリカ代表のウィング、コルビー選手。
巨漢揃いの南アチームにおいて、スクラムハーフかと思うような小柄さですが、当たり負けない体幹の強さ、スピード、ステップの巧みさで見事にオンリーワンのポジションを勝ち取っている素晴らしい選手です。
全体的に小柄な日本代表がベスト8に進出できたように、見た目だけでは判断できない戦術や様々な要素を磨くことで上位に食い込める多様性を持つラグビーに、今後も目が離せません!