自宅ごはんを中心に、まあまあ幅広いトピックを扱うくりたです。

今日は性的マイノリティに対する最近の世間の風潮について感じていることを少し・・・

「おっさんずラブ」のカジュアル化したゲイ模様に衝撃

先日「おっさんずラブ」を初めて観ました。「え?今頃?」と思った方、遅くてすみません。

昨年どうも流行しているようだということは知っていましたが、機会がなく今回二日間ほどで全話観ましたが、確かに面白いですね。

ばっさりまとめてしまうといわゆる月9ドラマの恋愛を『モテ期』を重ねて男同士の人間模様で描いた、という内容ですが、吉田鋼太郎さん、田中圭さん演じる人物をはじめとして、脇役のキャラもそれぞれ性格付けがしっかりあって、嫌な感じの人物が出てこなくて爽やか。映像効果もポイントポイントで光の反射がハート型だったりダイヤ型だったり、楽しんでいる感じがしてこちらもわくわくした瞬間が沢山ありました。

かなりスピーディで劇的な展開の末、さっと終わってしまったので、この夏2019年8月には映画が公開されるというのも頷けます。登場人物たちのその後や、どうしてそうなったのか気になる点が満載ですからね。

しかしドラマを観て驚いたのは、深夜枠とはいえゲイの恋愛、しかも一つの会社の中で複数の恋愛模様が錯綜している様がこんなにも堂々と語られる時代になったのか!ということ。しかも超コメディ。

こんなのBLマンガや小説でないと現実にはまず起こりえないし、そもそも世間からそういう描き方が受け入れられているなんて、時代は変わったなと思いました。

そうこうするうちに、今度はNHKのよるドラで「腐女子、うっかりゲイに告る。」というまたBLとゲイネタが物語の中心にすえられたドラマが始まっているではありませんか。他にもそれらしいものは色々あるようなのですが、コミケや一部の愛好者の間で楽しまれているのはあり得るとしても、民放や天下のNHKが本筋の中心にゲイや腐女子を持ってくるなんて、そのカジュアル化が進んでいることにただただ驚きを隠せません。

最近世間は、ついにBLとゲイまでも流行にしようとしているのでしょうか。

元祖BL雑誌「JUNE(ジュネ)」

「JUNE(ジュネ)」という雑誌が昔あったのですが、ご存知の方はおられるでしょうか。

いわゆる少年愛、ざっくり言うと今でいうBL=ボーイズラブを扱った少女向けのかなりマニアックな雑誌でした。現在の私はいわゆるBL文化からはほぼ遠ざかっていますが、中学生や高校時代は何にでも興味があって、その一環でこういった雑誌も毎号買っていた友人に借りて、時々読んでいました。

発刊は78年で、2012年で最終刊を迎えましたが、80年代の私が読んでいた時代は、毎号の表紙を当時『風と木の詩』という一大センセーションを巻き起こした漫画を描かれていて、今や京都精華大学 学長である竹宮惠子先生が書き下ろし、萩尾望都先生や名香智子先生など当時のそうそうたる少女漫画家が寄稿していました。小説部門では数年前に他界されましたが、『グイン・サーガ』などで知られる栗本薫先生も「小説道場」なるコーナーを持っておられて、マイナーな割に驚くような豪華な執筆陣でした。

少年愛や同性愛を扱ったマンガはその当時も「花とゆめ」の『パタリロ!』『ツーリングエクスプレス』「プリンセス」の『エロイカより愛をこめて』、LaLaの『日出処の天子』などなど人気のマンガでさまざまありましたが、「ジュネ」は美少年の怪しい写真が掲載されていたり、何となく読んでいること自体がいけないことをしているような退廃的な香りが濃厚で、読んでいるとどきどきする危険な麻薬のよう。クラスの友達と貸し借りするときも何となく他のマンガや本とは違って、周りのクラスメイトには知られないよう、紙袋に入れたままこっそり受け渡しをしていたことを思い出します。

雑誌の中身は先も言ったように少年愛を扱っていて、BLマンガも何本か連載含めて掲載されていましたが、そのほかには歌舞伎の黒子の目を通じて歌舞伎の演目や舞台裏をわかりやすく紹介する連載があったり、耽美的な映画を紹介したりと様々な内容があって、今振り返ると単なるBL雑誌でなくて「耽美」をキーワードにした一種のカルチャー雑誌という側面もあったことに気付かされます。

雑誌タイトルの「JUNE」も『泥棒日記』などで知られるフランスのアウトロー系同性愛作家ジャン・ジュネから取られているというのも、知的さの片鱗を感じさせて、背伸びしたい多感な少女にはわくわくさせられる要素が満載でした。

そこで知ったものは歌舞伎の演目をはじめとして、近年岸田戯曲賞を受賞された飴屋法水さんの当時の劇団「東京グランギニョル」や、澁澤龍彦氏、丸尾末広氏など。流行とは一線を置き独自の美意識について探求された人々の考え方や作品は、脳内に無意識に染み込んでくるようで、今の私の思考や意識に大きな影響を与えてくれたと思います。現代美術に興味を持つようになったのも「美術手帖」「STUDIO VOICE」と並んで、「JUNE」もひとつのきっかけでした。

当時同性愛=少年愛系の雑誌では現在の裏BL文化というか二次小説や漫画の潮流の源とも言える「ALLAN」というのもあり、こちらも発刊当初は耽美的な雰囲気が濃厚で、80〜90年代の少女にとっての男性同士の同性愛というのは、自分達には絶対的に手に届かないもの、禁忌としての退廃的なファンタジーの要素が強くあったと言えるのではないかなと思います。

そこから考えると今のBL文化は書店に行くと堂々とかなりの広さのコーナーが取られていたり、テレビドラマの原作になったりと、一般の人が足を踏み入れなくても目にしたり耳にしたりするような環境があって、とてもオープンになったことは本当に驚きです。

一方で私の青春時代の常に影が付きまとい、同時に高い美意識を追求するというセンシュアルな部分はあまり目立たなくなって隔世の感があり、そのことには一抹の淋しさを覚えたりもする昨今です。