自宅ごはんを中心に、まあまあ幅広いトピックを扱うくりたです。

未熟なす?いえいえ、立派な完熟です

最近は野菜もびっくりするくらい多品種になりましたよね。

野菜ブームのきっかけは20年ほど前から全国的に知られ始めた京野菜だったのではないかなと思います。万願寺とうがらし、壬生菜など京都の土地の名前のついた野菜たちです。これらは伝統野菜として昔盛んに作られていた土地の名前が付いている品種ですが、最近はそうした知られざる伝統野菜の他に、品種改良によって新しい野菜もどんどん生まれています。

私が普段からよく買い物する「みどりなす」という若いお兄さんがやっている小さな八百屋さんがあります。開店当初から通っているのですが、もともと料理人を目指していた経歴から野菜を売るという目線でなく、つかう側の目線を持たれているのかなと感じるのは、面白い野菜がたくさんあるから。

このみどりなすもこちらのお店で初めて知ったお野菜です。

それまでナスといえば紫色、かろうじて真っ白な白ナスというのがあるというのを知っている程度でした。ある夏の日に店頭で薄い緑色のナスを見かけてお兄さんに訊ねてみたところ、「みどりなす」というナスで、日光が当たっていないから紫にならないとかそういうことではなく、皮が薄い翡翠色をしている品種なのだそうです。

写真は長ナスの形ですが、お店でよく見かけるのは千両なすなどと同様ぽってりしたものが多いです。

お兄さんはお店の名前につけるほど大好きなナスだというので、試しにひとつ求めてみました。

初めてのクリーミー感。これがナス?

なす田楽で試してみてびっくり!今まで食べたことのないような、とろりとしたクリーミーな食感です。

火を通すととろっとするとは聞いたものの、これほどとは!

田楽といえば賀茂茄子が有名で、こちらも素揚げすると果肉が柔らかく口の中で解けるような食感が特徴的ですが、それとも全然違います。クリーミーなナスというのがあまり想像できないかもしれませんが、これはクリーミーとしか言いようがありません。

沖縄料理がお好きな方は沖縄弁でナーベラーと呼ばれるヘチマの炒め物をご存知の方も多いかと思います。ヘチマって火を通すとちょっとヌメッとして、口の中でぬるっととろける感じですが、そのぬめりをなくして、ヘチマ独特の香りでなくナスの味になった感じです。

決してくどくはないのですが、舌にまとわりつくようなねっとり感があって、他のどんなナスとも違います。

炒めても揚げても。夏だけのお楽しみ。

ナスは夏場はよく生のものを塩もみして生食したりしますが、それだとみどりなすの特徴が感じにくいので、やはりお薦めの調理法は火を通すこと。田楽では素揚げしましたが、焼いたり炒めたりしてもクリーミー感は充分楽しめます。

こちらは豚肉とみどりなす、ズッキーニ、トマトの炒め物ですが、思い切って大きくカットしました。炒めて塩胡椒と少しのお醤油で味付けしただけのシンプルな料理ですが、それぞれすべて違う素材の食感が楽しめて、もりもり野菜を食べるのがうれしくなるメニューです。普通のナスでももちろんおいしいのですが、みどりなすで作れるのはこの野菜が出回る夏の間だけ。年間でみどりなすを食べられる機会は限られているので、一口ごとに「ああ、おいしい。このとろり感は他にはない。」と食べる幸せを感じます。

まだ普通のスーパーでは出回ることのないナスですが、もしも見かけたらどうぞお試しください。びっくりしますよ。