自宅ごはんを中心に、まあまあ幅広いトピックを扱うくりたです。
前の記事で京都の5花街とそれぞれの舞の会のあらましについてご紹介しました。
今回は今年久々に伺った、上七軒の「北野をどり」についてレポートします。
上七軒の「北野をどり」の魅力はアットホーム感

上七軒は京都の花街の中でも一番歴史が古く、由緒ある花街です。上七軒という街の名前は、当時この場所に七軒のお茶屋さんがあったから、とされています。
有名な祇園に比べると街自体がとても小さくて、歩いていてもあっという間に通り過ぎるほどですが、とても格式の高い花街なんですよ。
会場である上七軒歌舞練場の門をくぐると、すぐ目の前には写真のような風景が広がります。
上七軒のシンボルである串にさしただんごをモチーフにした提灯が並んでいる様が美しく、手前に見える橋の下には池があり、派手派手しくない綺麗な錦鯉がたくさんいます。

劇場内は撮影禁止なので、ここからはテキストでご紹介しますね。
「北野をどり」は毎年二部に分かれた構成で、30分ほどの小芝居と15分の休憩、30分ほどの舞です。
第一部の小芝居では芸妓さん・舞妓さんが男役も務めたりして、何となく和風宝塚的な雰囲気で、こういう演劇的要素のある舞の会は「北野をどり」だけの特徴です。話は毎年変わって、正直内容は何ということもなくて観たそばからストーリーが頭から抜け落ちていくような感じなのですが、観ていると不思議と微笑ましくて口元がほころんでしまいます。プロの役者さんにはない初々しさのようなものが、超ベテランの芸妓さんの演技にも感じられるんですよね。皆で一生懸命に作り上げている感じ。
学芸会っぽいといえばそうなのですが、それが非常に所作の美しい女性たちによって、しかもものすごく高そうな着物を着て演じられているという、なかなかにシュールな空間が出現しています。
第二部の舞の方は第一部からうって変わって、彼女らの本領発揮の本気の芸が堪能できます。
何分にも小さな花街なので舞妓さん・芸妓さん総勢でも30名足らずですが、彼女らが舞台に一斉に登場して舞う姿は実に華やかです。色とりどりの振袖に花簪をさした舞妓さんたちは皆まだ少女のあどけなさが残っていて、お花に例えるとぷっくりと丸い椿の蕾のようです。対してお姉さんの芸妓さんたちは皆黒い裾引摺姿でキリッと筋の通った百合。文章で読むと舞妓さんの方がぐっと華やかで芸妓さんは地味そうに感じるかもしれませんが、芸妓さんたちの衣装は舞妓さんたちに比べてシンプルな分、彼女ら自身の存在感と貫禄ある優雅な所作が引き立ち、これは一朝一夕には身につかないなあと実感させられます。
「北野をどり」は舞妓さん・芸妓さんの芸は素晴らしく、鍛錬の賜物との思いは他の花街同様ですが、ここは小さな花街ということもあってか劇場の規模も小さく、一番遠い席でも舞台が近いです。
また第一部の小芝居の初々しさというかほんわか感も手伝ってか、お客さんと演者の距離が気持ち的にも近くて、日頃この花街に縁がない人が観に行っても、何だかそのほっこり感に溶け込んでしまって、馴染みやすい雰囲気があります。
舞の会で一番規模も大きく有名なのは祇園甲部の「都をどり」。もしも「都をどり」は一度観たから、もう舞妓・芸妓はいいや、という方も違う花街の舞を観られると、雰囲気ががらっと変わるので、機会があれば複数の花街のものを観ても楽しいものですよ。
おまけ・お土産は黒蜜たっぷり、芳しいきなこ付きの「七軒だんご」!
「北野をどり」の楽しみとしては、舞の会自体の他にお土産も色々あります。
私も今回知人の勧めで初めて京菓子の老舗「老松」さんが上七軒のシンボルである串にさした団子の意匠から作った「七軒だんご」をお土産に買って帰りました。

かなり柔らかい小さな団子にねっとりした黒蜜が絡んで、優しいはんなりしたおだんごでした。口に入れると噛むというより溶けていく感じで、こういうタイプのおだんごはなかなか珍しいと思います。
また、老松さんのきなこは以前からその素晴らしい香りで大好きなのですが、このだんごにきなこをかけるとまた黒蜜だけだった時とは違うコクが生まれて、かなりの口福です。
蜜がたっぷりでだんごを食べた後もたくさんあったので、最後にこちらも余ったきなこを全部かけて一緒に練ってスプーンで食べ尽くしちゃいました。
