自宅ごはんを中心に、まあまあ幅広いトピックを扱うくりたです。

食事は一期一会の出逢いもの

本日のメニュー

・切り干し大根入り野菜と豚肉のポン酢炒め
・しじみと豆もやしのお味噌汁
・枝豆

私の毎日のご飯というのは特別この料理が食べたい!ということがなければ、大体その日のスーパーや八百屋さんで美味しそうな野菜を選んいるうちに、何となく今日はこういうメニューにしようかなあと思いついて作るというパターンです。

なので、本などでしっかりとレシピが決まっている料理だと、材料が足りなくて結果としてなし崩し的にアレンジ料理になるということもしばしば起こります。

なので普段は既成のレシピは参考程度にとどめて、適当なものを作っています。ひどい時は材料を切ったりしている間に気が変わっていったりするので、名無し料理が圧倒的で、おいしかったのに二度と再現不可能なものも結構あります。

要するにいい加減な料理なのですが、それが良いこともあります。

二度と同じ料理が作れないということは、日々新鮮な気持ちで食事が摂れること。もうこの料理と相見えることは二度とないと思うこと。これって一期一会の精神ですね。

一期一会は茶の湯の精神の中から生まれた言葉で、もてなす側の亭主ともてなされる側の客が、どの茶会も一生の一度きりだと心得て、双方互いに誠意を尽くしてその時間を過ごすというのがその由来です。

確かに戦国時代の茶会などでは、明日はどちらかあるいは両方が戦によって命を落とす可能性が日常としてあり、茶会で顔を合わせることは今の瞬間で最後かもしれない、と感じる機会は多かったろうと思います。しかも寝返り等も日常茶飯事ですから、茶室の中で互いの身分の差や立場を忘れて過ごすということがとても稀有な時間であったことも想像に難くありません。

今の日本で暮らす私たちには明日ともしれない命と思う機会はそれほどありませんが、それでも今日の今という瞬間は、どんなに正確に再現しようとしても、空気や季節、自分の気持ちなどが完璧に再現できるはずもありません。

卑近な例ではあるけれど、日々の決まったレシピやメニューのない食事は、おいしかろうとまずかろうと、もう二度と再現不能な瞬間が常にあることを思い出させてくれるのです。

変わり切り干し大根の楽しみ方

今日のメニューが特別かというとそういう訳ではありませんが、切り干し大根を炒め物に使ったのは初めてです。しかも今日の切り干し大根は結構珍しい形。

真ん中に見える茶色くて三角の形のものは切り干し大根なんです。

あまりこういう形は見ませんよね。少し集めの歯ごたえのしっかりしたタイプで珍しいので、どう使おうかと思いを巡らせている間に結構日が経って茶色くなってきてしまったので使うことにしました。

普通に煮物にするのも良いのですが、珍しいから珍しい食べ方にしようかと思い、炒め物に。

生の大根とはかなり食感と味わいは違うけれど、独特の食感が炒め物の中でも存在感を放ってくれます。味が生の大根よりも染み込み、ぎゅっと噛み締めるとじわっと溢れる滋味、といったところですね。豚肉や戻した干ししいたけ、トマトなどのエキスが感じられます。少しあっさりさせるために味付けはポン酢をかけて軽く水分を飛ばして。ポン酢に火を入れるのは案外伝える方法で、お醤油と柑橘類の酸味がさわやかなんです。それだけだと酸味が勝ちすぎてしまうので、中和の目的で少しだけ砂糖を加えます。料理に砂糖を加えるのを嫌がる人もいますが、甘さを感じるほど大量に入れなければ、塩味、酸味、甘み、苦味、うま味の五味のバランスを整えるのには少し使う方が良いです。どうしても砂糖に抵抗があるなら、味わいは若干変わりますけれど代わりにみりんでも良いですね。

香りで味わう枝豆、ほのかな渋みと金属感のしじみ汁

盛夏から初秋にかけて盛りを迎えるのは枝豆。夏の醍醐味といえばビールと枝豆のイメージがあるほど夏には欠かせない豆類です。鮮やかでほんの少し黄がかった緑色が意気盛んな植物を連想させて、元気なイメージですね。最近は店頭でびっくりするくらい多種多様な種類が並び、茶豆なんかは見た目はまるで傷んでるの?と思わせるような茶色と緑が混じった変な色だったりしますが、食べてみると抜群の甘みでギャップ萌えするようなお豆ですね。

枝豆で重要なのは香りかなあと思うのは、最近の枝豆は香り高いものがとても多いのですよね。茹でているときにはもちろん強い香りを放ちますが、冷えてしまってもまだまださやを通じて独特の豆の甘さを感じさせるやわらかで少し重さを感じるような香りを放っているものが多いです。今日の枝豆の種類はよくわかりませんでしたが、とにかく濃厚な香りで食べなくても食べているような気持ちにさせてくれます。

ビールのおともに最適というのも、この濃厚な香りが炭酸でスッとするビールと相性が良いからなのでしょうね。

しじみ汁は久しぶりです。結構しじみってあさりに比べても高価な気がします。オルニチンが肝臓の働きを助けてくれるので酒飲みには嬉しい食材らしいのですが、年に数回買うか買わないかという程度です。しじみをはじめとする貝類の含まれる亜鉛は、実は味覚とも密接に関係していてあまりにも亜鉛を取らないと、味を感じることができなくなってくるのだとか。そんなに大量に摂る必要はないようですが、それはおいしいもの好きには欠かせない栄養素ですね!

その亜鉛のせいなのか、しじみ汁は後味に生臭さというか金属臭さというか、渋みが変化したような独特の味がありますよね。これが美味しさの秘訣なんですけど。この味を感じると、「ああ、今貝を食べているなあ。」という気持ちにさせられます。うま味の後にやってくるこの独特の味は貝にしか感じることはないので、長らく食べていないと無性に恋しくなってくる独特の風味だと思います。