自宅ごはんを中心に、まあまあ幅広いトピックを扱うくりたです。
すでに季節は春を通り越して完全に初夏に入り、日中には半袖の方も見かけるようになりました。
今日は逆に少し寒かった冬の時期を懐かしむ料理についてお話ししたいと思います。
献立のポイント:ルーツである北海道の味覚をメインに
・きんきの飯寿司、茹でいんげん豆添え
・ゆりねとモロヘイヤの卵とじ


私は北海道で生まれましたが、一歳になる前に本州に越してきたので彼の地で暮らしたことはありません。
けれども両親は二人とも生まれも育ちも北海道なので、昔から今に至るまで家の外は関西文化圏、内は北海道文化圏で過ごし、言葉遣いも変わります。物心がつく前からずっと京都文化圏で過ごしているのに私の関西弁が京都弁とも少し違うのは、家のうち外での二重文化の影響なのかもしれません。
今振り返ると食べるものも少し同級生たちとは違っていたようです。
小さな頃から今まで絶えることなく母方の実家からは北海道の味が送られ続けています。長いことそれは祖母の名で送られていましたが、5年ほど前に他界してしまいましたので、今は叔母がその役目を務めてくれています。
年中通して送られてくるのはまず鮭です。そのほかに祖母の手製のするめいかの塩辛、うにを塩漬けにして固めた粒うに、”こまい”というたらのような魚をカラカラに干したもの、ぬか鰊、身欠き鰊、鮭や鰊の切込・・・今回お話しする飯寿司もその中のひとつでした。
優しい味わいの熟鮓−飯寿司−
今では全国各地の地元料理がどこでも楽しめるすごい時代になり、かつては地元の人しか知らない料理も多くの方が知るような時代ですが、飯寿司に関してはまだ知る人ぞ知る的な味ではないでしょうか。
北海道独自の食べ物というよりも、北海道を含んだ東北などの北国で冬の保存食として発達したもののようです。
生魚をご飯や野菜と一緒に漬け込んで乳酸菌発酵させたもので、生魚とご飯の発酵物として有名なのは滋賀の鮒寿司などですが、鮒寿司がその強烈な匂いで好き嫌いが大きく分かれるのに対して、飯寿司はあまり刺激を感じる食べものではありません。
寿司という名は付いていますが、ご飯ではなくあくまでも魚が主体で、発酵させるための乳酸菌の床としてご飯が使われています。
酢漬けと違って乳酸菌で柔らかく発酵した魚は程よく身が引き締まりつつ、独特のほのかな甘みがあり、特徴的なところとしては野菜が使われているのが他の熟鮓と違います。
魚と野菜を一緒に漬け込むのは北海道民の性格?
通常は魚の漬物は魚のみ、発酵させるためにご飯や糠を使うということはありますが、北海道はどうも少し違うようで、この飯寿司の他にも鰊漬けという漬物があって、こちらも鰊の他にたっぷりのキャベツや大根、人参が入っています。飯寿司よりもおそらく北海道民以外に知られていない鰊漬けですが、何故に北海道では野菜と魚を一緒に漬け込む文化が発達したのでしょうね。
もしも機会があれば日本の発酵学の第一人者である小泉武夫先生にご存知かどうかお伺いしてみたいものです。
北海道民は土地が広いことが県民性に影響を与えているのか、割となんでも大雑把に考えたり、ものを大量に買ったりする傾向にある人が多いので、もしかしたら魚を漬ける時に野菜も入れたら一緒に味付けできて面倒がない、くらいの発祥だったりするのかもしれません。
元々は鮭や鰊、ホッケやハタハタといった昭和の中頃までは大衆魚というか、庶民にとってありふれた魚で作られていましたが、最近北海道を訪れた際に、きんきで作った飯寿司というのがあったので、珍しいと思い、買い求めてみました。写真はそのきんきの飯寿司です。
飯寿司は少なくとも関西では普段売られていることはなく、デパートの北海道フェアでも毎回見かけるというほどの定番メニューではない気がします。
そのせいか、これを食べるとなんとなく自分のルーツが北海道なんだなあと感じたりします。ソウルフードというほどではありませんが、郷愁を感じさせる食べ物のうちのひとつです。