日本酒が恋しくなる北の珍味たち

自宅ごはんを中心に、まあまあ幅広いトピックを扱うくりたです。

本日のメニュー

・銀鱈、紅鮭、ニシンのスモーク、春菊と菊、ワカメ添え
・ウニちらし
・タコの燻製

日本酒なくして如何にせん、というメニューですね。

両親が北海道出身ということもあり、関西に住みながらも食生活ではずいぶん北海道の素材をたくさん食べてきました。

子供の頃からお酒のアテになるようなものが大好きで、紅鮭の麹漬けである石狩味などは、北海道では「切り込み」となぜか呼ばれていますが、今も昔も大好きです。

先週までしばらくそちらに行っていましたので、今日は北海道ならではの珍味のご紹介です。

ほぼ作ってません(笑)

まずは燻製シリーズです。

銀鱈と紅鮭とニシンのスモーク。スモークサーモンは前菜の花形なので、見たことも食べたこともないという方はほとんどおられないと思いますが、こちらは紅鮭。北海道においても普通の鮭よりも紅鮭の方が希少価値のために高価です。私たちが一般的に「鮭」と呼んでいてシャケ弁などに入っているのは業界的には白鮭と呼ばれています。確かに白っぽいというかピンクがかったふんわりしたややパステルカラー的な切り身が多いですね。

紅鮭は写真の端に写っているものを見てもわかる通り、色鮮やかな朱色です。高級というイメージからは、脂とうま味がたっぷり乗った印象があるかも知れませんが、実はうま味はもちろんたっぷりですが、脂はそれほど多くありません。というのも、紅鮭は天然ものしかないのです。白鮭と違って生態がまだ明らかでないので養殖方法が確立していないのだとか。

日本食はあっさりしているけれど、日本って案外脂好きですよね。牛肉でも魚でも脂がのってる=おいしいというイメージがあるので、紅鮭についても何となくキングサーモン的に思われている方も多いようなのですが、こちらは脂質控えめであっさりコクうまという感じです。

私は牛肉も強烈な霜降りよりは赤牛などの赤身肉、マグロも大トロより断然中トロ派なので、鮭もキングサーモンやアトランティックサーモンよりも、紅鮭の方が好きです。

銀鱈のスモークは今回人生で初めて食べました。叔母たちに訊ねても今回初めて知ったとのことなので、かなり珍しいもののようです。

銀鱈といえばこちらは脂がのったとろりとした西京漬で知られる高級魚。スモークの方も脂はのっていますが、ギトギトではなく生ハムのようなしっとりと柔らかく口内にうま味広がる感じで、ちょっと驚きのおいしさでした。

そのままで食べても後味に脂の甘みがふわっと舌に残って何とも言えない余韻が素晴らしいのですが、今回は野菜と共にいただくサラダ形式にしました。

ほんのり甘さのある雅な菊

添える野菜は春菊と菊です。

春菊はともかく、菊は食べたことがない方も結構いらっしゃるかも知れませんね。最近は関西でも大きいスーパーだと置いていますが、基本的にはもともと東北の食材で、東北出身の方は日常的に食べていたという方が結構多いです。

まさに菊そのもの。

食用としては黄色の他に紫色のものをよく見かけますが、今日は黄色だけです。一瞬お刺身のツマによく入っているたんぽぽを連想させるので、たんぽぽと同じような味に思えますが、食べてみると全然違います。

菊は生ではおそらくあまり食べず、沸騰したたっぷりのお湯に酢を入れてさっと湯通ししたものをサラダや和え物、酢の物などにしていただきます。

今回は魚のスモークの味を引き立たせてもらうために、春菊も菊も全く味付けせずそのままいただくだけ。

一応意図があって、手抜きで味付けしていないわけではないのですけれどね。

春菊は言わずもがな野趣を感じさせる日本のハーブともいうべき香り野菜ですが、対して菊はそれほど味自体に強さはありません。お花を食べるなら苦味もありそうに感じますが、いわゆるほろ苦さもほとんどなく、キュッキュとした独特の歯ごたえというか歯滑りというか、食感があり、後からほのかな甘さがやってきます。

よく大根おろしでみぞれ和えにするそうですが、醤油やポン酢などの味をあまり強く出すと、独特の味が感じにくくなってしまうので、ここではしっかりしたスモークを食べる合間に口直しとして食べる感じにしてみました。

バランス的にはなかなか良かったと思います。

濃縮されすぎたうま味に涎が止まらない

最後にタコの燻製です。

これはスモークサーモンや銀鱈とちょっと毛色が違うので、別の器に入れました。

今日食べた他のスモークのどれよりも味が濃いです。

煮物か何かで味をつけているのかな?と思うくらい。

以前も別のところでタコの燻製を食べて、そのあまりの味の濃さに驚いたことがあります。

普段あまりタコからの出汁というのは考えませんが、実はものすごくうま味のある食材なんですよね。かんでもかんでも、じゅわあ〜っと味が奥から出てくる感じです。

そのまま食べてももちろん最高ですが、炊き込みご飯などにしても相当おいしいらしいので、ぜひ近々試してみようと思います。

しかし燻製って素晴らしい調理方法ですね。

そのままだと数日で腐敗してしまう食材を保存できるだけでなく、生ではわからなかった味をグググっと引き出して驚異のうま味天国に変えてしまう。

その起源は石器時代との説もあり、当時は今のような半生ではなくコチコチだったでしょうし、恐らくもともとは食べ残った肉がうっかり乾いた上に燻されてしまっただけなのでしょうが、偶然の重なりからそれを技術に研鑽していったというのは、まさに知恵としか言いようがありませんね。

ふわっと香る煙の中に、悠久を垣間見るそこはかとなくロマンのある食べ物です。